21世紀における大阪府高等学校囲碁連盟の発展を願って


大阪府高等学校囲碁連盟会長 三木一也(大阪府立西野田工業高等学校長)


 
 2001年(平成13年)5月11日、私は、大阪府高等学校囲碁連盟会長として、役員の皆様方からご推挙されました。微力ながら本連盟及び全国高等学校囲碁連盟の発展を願って尽力したい。私なりに、現在を見据えながら、この10年間を振り返り、今後の展望を述べる。
 
若者の囲碁離れの苦節10年間(1990年代)
 
 私は、1990年代を「若者の囲碁離れ」の10年間であったと実感している。本連盟では、1990年(平成2年)実施された全国高等学校囲碁選手権予選大阪府第14回大会から参加校・参加人数が急減し、慢性的に大会の参加校一桁、参加人数30人前後と続いている。1996年(平成8年)、本連盟の事務局長が、中学生の囲碁人口を各方面から調査した。結果は「来年の高校1年生の大会参加者は0」であった。この報告は、中学生に碁を打つ生徒がいないことを意味する。これらの原因は、一言で言えば囲碁界の衰退であるが、大阪府におけるその原因を具体的に述べると、
@ 各高校において1880年代、盛んであった必修クラブが1990年代クラブが形骸化したこと。
A 大阪には、1990年代に私塾の子ども囲碁教室が閉鎖されたこと。
B 家庭で子どもに囲碁を教えなくなったこと。
時代の流れであるが、家庭内で子どもたちの遊びの文化が電子機械ゲーム(コンピュータゲーム)に移行している。
 このような状況の中で、本連盟は、囲碁連盟存続の危機感を持ち、発想の転換を行い,生徒が囲碁を打つ状況を各学校で創るように、大会の運営、指導者講習会等に工夫・努力を真剣に模索し、下記の施策を実行した。
(1)中学校囲碁大会を開催
 1997年(平成9年)、全国高等学校囲碁選手権大阪府大会に中学校囲碁大会を同時開催することに決した。大阪府教育委員会高校教育課企画課係のご指導を得、当時の井上雅雄事務局長を中心に各市の教育委員会への公文書等の作成、大会のルール等整理した。
 初めての試みであったが数校、約10名程度の参加があった。
(2)学校教育へ囲碁を、大阪府教育委員会へ要望書提出の決断
 1998年(平成10年)府立学校に囲碁を導入することが国益・府民の利益にかなうと判断し、本連盟は日本の伝統文化である囲碁を正課の授業に取り入れるため、要望書を草案し8月3日、大阪府教育委員会事務局教育長に提出した。
 かくして、要望書提出から6ヵ月後、大阪府教育委員会は全国ではじめて教科・芸能文化・科目囲碁を府立学校教育に設置した。平成11年3月8日付けで、教育長から各府立高校に大阪府立高等学校教育課程基準の一部改正についての通達が送付された。そして、その月の24日の朝日新聞朝刊一面に報道される。毎日、読売の各三大新聞は報じた。その反響は、学校外での歓迎の声が教育委員会に多数届けられており、また協力したいとの暖かいご支援を、囲碁普及団体、財団法人及び一般の方々から賜った。
 21世紀の新しい教材として囲碁がいよいよ学校教育に導入された。
(3)高校囲碁テキスト作成
1999年(平成11年)3月20日教科芸能文化・課目囲碁のテキスト作成プロジェクトチームを結成する。作成の要項は次の通り。
@ 教科芸能文化・課目囲碁テキストの目標・内容
大阪府立高等学校教育課程基準の一部改正についての通知文の第2その他特に必要な教科の5、芸能文化・課目の名称囲碁目標、内容に準ずる。
A 教科芸能文化・課目囲碁テキストの作成期日
平成11年9月中旬
B プロジェクトチームの構成員
大阪府高等学校芸能文化連盟囲碁部会委員
(4)府立学校4校が囲碁の授業を導入
 2000年(平成12年)から。4校は下記のとおり。
 大阪府立清水谷高等学校
 大阪府立長百高等学校
 大阪府立福井高等学校
 大阪府立東住吉工業高等学校
 (2001年・平成13年度岬高校を加え5校)
 以上、簡略に10年の歩を述べたが1999年(平成11年)頃から、囲碁が若者に関心をもたれた契機があった。週刊漫画雑誌コミック誌に「ヒカルの碁」が掲載されたことである。現在では、大阪テレビでアニメ「ヒカルの碁」が放映されている。
このような状況もあってか、1999年(平成11年)大阪府大会から、80名を超える参加生徒及び参加校も10数校となった。
 さらに、各高校間での囲碁大会も開催される運びとなった。一例ではあるが、2000年3月31日、高槻高校を中心に、茨木工業高校、梅花女子高校の3校連合囲碁大会等である。特に付記されることは、同年3月25日、26日の両日にわたりNTTドコモ関西のご尽力により、関西高等学校インターネット囲碁大会が開催されたことである。
 
21世紀における大阪府高校囲碁の展望
 
 すでにご承知のとおり、少子高齢化、情報化、国際化が1990年代に各方面から言われて久しいが、21世紀には、それがさらに進展することに間違いはなく、その取り組みが大切な時代になる。
 私たちは日本伝統文化である囲碁を学校教育の場でクラブ、部活動で享受してきた。1990年代の学校改革の流れの中で、私は囲碁を新学力観に位置づけられる教材として観るようになった。
 中華人民共和国の各都市では、小学校で囲碁が授業に取り入れられており、囲碁学校と称する学校が何校も存在する。
 2000年10月23日、大阪府教育委員会のご支援を得、上海市応昌期囲碁学校へ本連盟坂じゅんいち副会長が訪問した。これらについては同年12月の週刊「碁」に詳しく掲載されている。これが契機となり、本連盟は2001年12月22日〜25日第1回囲碁教育訪中団を企画し、大阪府の高校教員が、上海囲碁協会との友好対局(会場:復旦大学)、上海市応昌期囲碁学校訪問視察などを実施した。
 これらについても本年2月の週刊「碁」に詳しく掲載されている。21世紀における大阪府高校囲碁の発展を願って大阪府高等学校囲碁連盟は、下記の提案を行い具体に実現化をはかる。
(1) 府立学校に囲碁授業を推進
 2003年、新学習指導要領実施にともない各校に教育課程に「総合的な学習の時間」が導入される。国際理解、人権、ボランティア(奉仕)福祉などのテーマが考えられる。
 人間教育に多くの利点を持つ囲碁は「総合的な学習の時間」を支援できる教材である。テキスト、教具などについて囲碁授業実施の各校と連携しながら推進したい。
(2) 囲碁教育訪中団の実施
 大阪府の姉妹都市である上海市を中心に3泊4日程度の学校視察及び、見学などの訪中団を結成し訪中する。大阪府教育委員会のご指導、ご支援なども得ながら進めたい。
 但し参加者各自負担で行う。
(3) 大阪府中学校囲碁連盟結成に支援
 現在、大阪府大会に中学生囲碁大会を同時開催している。これを基に参加校の各中学校等と連携しながら大阪府中学校囲碁連盟結成を実現したい。
(4) 各地域、学区ごとの学校間囲碁大会を支援
 現在の大阪府高校棋戦は全国高等学校囲碁選手権予選大阪府大会、新人大会、大阪芸文祭による囲碁大会等であるが、地域の学校間での定期的な棋戦の開催を呼びかけ、支援する。
 近い将来、みじかに学校間インターネット囲碁が行われる。これらについても本連盟は支援したい。
 本連盟が母胎である大阪府高等学校芸術文化連盟(芸文連)、日本棋院等から、今後ともご指導を仰ぎ、私は大阪府高等学校囲碁連盟の発展を推進いたしますので、全国の囲碁関係の皆様のご支援をお願いいたします。