発足の経緯

1998年   囲碁梁山泊において、和田先生が「3子必勝法」を発表。
1999年   囲碁梁山泊において、菅野先生が「囲碁の進化論」を発表。
2000年   囲碁梁山泊において、「碁を科学する」の座談会が開かれる。
  8月 菅野、越田 2名 での囲碁理論について初会合。
2001年 6月 兵頭氏も加わり、囲碁理論について話し合いがもたれた。
  12月 和田、菅野、垂井、藤牧、越田の5名の囲碁梁山泊のメンバーによって、
囲碁学会へ向けての研究会の発足提案がなされる。
2002年 2月 菅野、越田、岡本、横内の 4名 による話し合いが持たれた。
新たな参加者を迎えて、囲碁教育研究会がスタート
2002年 5月 第1回 囲碁教育研究会として20数名の教育、囲碁、医学、通信企業の構成でドーンセンターで合同開催される。
6月 囲碁理論検討会が、囲碁教育研究会の第1回 理論分科会として
10名の参加者で関西棋院にて行なわれる。

 
囲 碁 学 の 確 立 を !
       ―「囲碁教育研究会」が発足―
平成14年5月9日(木)午後6時から大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)において、囲碁の教育的効果を学術的に研究しようと有志20人が集い「囲碁教育研究会」が開催された。

 この研究会の発足には「囲碁梁山泊」が深く関わっている。平成8年4月、囲碁文化の普及に真剣に取り組むために「関西社会人囲碁連盟」(会長:永井一夫(財)関西棋院副理事長)が中心となって「囲碁梁山泊春号」が創刊された。
その年の「秋号」の対談企画、永井一夫氏と「緑星囲碁学園」菊池康郎代表との「21世紀の碁は子供に託そう」において、“囲碁はすばらしい文化”であるとして、子どもたちへの普及の重要性がアピールされた。これを受けて「囲碁梁山泊の会」(会長:和田博大阪大学名誉教授)において、教育、文化、数理および医学の視点からの学術的研究の必要性が再三論議されてきた。
昨年10月、和田博・垂井清一郎両大阪大学名誉教授、菅野禮司大阪市立大学名誉教授、岡本正志京都教育大学教授及び前大阪府教育長の黒川芳朝氏(関西国際空港叶齧ア取締役)をはじめ大阪府高等学校囲碁連盟並びに吹田市教育委員会の関係者が中心となり、囲碁教育の学校教育課程への導入拡大のために学術的な研究会づくりが提唱され、今般その熱い思いが実り、多くの賛同者を得て発足することになった。

 冒頭、「囲碁梁山泊」の「3子必勝法」でお馴染みの和田博先生から「最近、囲碁界では韓国が頭抜けて強い。なぜなのか?碁を習うこどもが圧倒的に多いからである。碁をやれば頭が良くなるといわれてきたが、脳生理学の面から囲碁の効果を研究し右脳教育のひとつとして活用すべきではないかと日頃考えている。国際囲碁学会の設立を目標にしたい」と威勢のいい発言で始まった。


黒川芳朝氏からは「近年、日本特に関西の経済社会状況がおかしい。紳士録を見ると以前は趣味を囲碁とする人が多く見られたが、近年ではゴルフとなっている。これがわが国社会の衰退の遠因と認識し、教育長在任時の2年前“府立高校の教育科目として囲碁を認定”した。古来、子女の素養として“琴棋書画”が必要とされてきたが、棋すなわち囲碁は“Management Game”として今ますます必要である。小・中学校、さらには幼稚園から囲碁教育が始められるよう尽力したい」 また、大手前病院長としても活躍された垂井先生からは「先般の骨髄バンク支援チャリティー囲碁大会で金子満雄さん(浜松医療センター前所長)が多くの実証データを示し痴呆症対策でのゲームの効用について講演されたが、患者医療の観点からも碁の効果を見ていきたい」と。


岡本正志教授は「碁は構築型ゲームで対話が可能であり、他のゲームと区別できる。
また、石の並びが美しいと外国人が思うかどうか、“文化と認知”という比較文化論の視点からも研究対象になる。文化庁では知能・認知の研究で碁を使っている」 高石高校の杉岡俊男校長は「こどもの頃、祖父と父が自宅に地域の人を集め遅くまで碁会をやっていた。母が苦労していたので絶対に碁はやらないと思っていたがいつしか虜になってしまった。科学的根拠をもって学校教育の中にアプローチしたい」 大阪府高等学校囲碁連盟会長で西野田工業高校の三木一也校長は「昨年末、囲碁連盟の先生22人が上海の“応昌期囲碁学校”を訪問し、囲碁と通常科目の教育が併行して行われている実状を視察した。これから碁を子どもたちの国際交流の柱としていきたい。また、今年中に中学校の先生たちと協力して大阪府中学校囲碁連盟を結成できるよう努力したい」 吹田市教育委員会の横内環先生は「情報担当をしていて“CP教育は仮想現実”で人間関係等リアルな関係に欠けると考えていたが、囲碁に出会い、試行錯誤しながら模索するゲーム性が子供への教育に求められており、インターネットによる囲碁教育は非常に魅力のあるもの」等々多士済々の顔ぶれによる意義深い意見交換がなされた。


 当日の出席者には、このほか(財)日本棋院関西総本部の井上清事務担当部長、(財)関西棋院名田秀人事務長および同棋院棋士牛窪義高九段の囲碁界関係者とともに富士通梶AKDDI鞄剌報通信企業関係者も名を連ね、インターネット利用による囲碁教育のあり方を含め学校での教材等コンテンツ作成も研究していくことにした。 

 最後に、理論物理学の権威で「研究会」の議長役である菅野禮司氏および越田正常((有)日本囲碁ソフト代表取締役)・藤牧昇(関西電力葛ホ務)両世話人でまとめた具体的検討テーマが以下の通り提示され、目的を明確にした。

A、学校での囲碁教育の研究
 1、「総合的な学習の時間」での囲碁教育の活用方法
 2、インターネットを利用した囲碁教育
 3、一般教育としての「囲碁格言」

B、ゲーム理論としての数学的研究
 4、囲碁理論の体系化
 5、囲碁の格言と理論の検証
 6、他のゲームと囲碁の比較研究

C、右脳教育・幼児教育および痴呆症対策への活用研究 

 次回は本年7月4日(木)に開催することになり、黒川芳朝氏から「学校での囲碁教育の実情」と越田正常氏から「囲碁ゲームの本質に関する論理的考察」について発表が行われる。また、組織、規約も決定され、検討テーマにもとづき本格的に研究活動が開始される。
 なお、5月11日(土)、12日(日)の両日大阪市内のコニシホールで開催された「全国こども囲碁大会」において、同大会を主催する「全国子供囲碁普及会」の菊池康郎(緑星囲碁学園代表)・森野節男(関西棋院棋士九段)両代表およびその協賛企業であるコニシ株式会社森本昌三代表取締役社長が会員に加わることになり、菊池康郎氏が次回会合に参加されることになった。