創造性と教育環境について
  越田正常


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1 創造性の要件

創造とは、既存の成果物や概念に対して、新しい考え方や要素の付加のために、分解・再統合され、既存にない成果物が作り出される思考形態である。
実際に有効な成果物を創造するには、部分的な機能と全体的な機能とのバランスや関連、経済性より有効性が考慮されなければならないため、有効な数多くの知識が必要になる。
 創造過程での初期状態は、インスピレーション(直感)によってもたらされるが、その直感を成果物に成長させる過程においては、未来の時代に適応した目的意識、また夢や理想、責任感、好奇心が必要となる。これらの能力がこの目的達成への意欲や継続的な集中力を高め、すでに培われた分析力、統合力と連動して、新たなインスピレーション(ひらめき)をもたらす。このような高度な意識状態が必要な日数は、数年におよぶ場合もあり、これらの繰り返しの結果、個々の概念が全体概念に高められ、未来社会に適合した創造物として生まれる。

 つまり、基本的な3つの思考サイクル
インスピレーション(直感)⇒ 分析 ⇒  統合
を繰り返し行なうことで、全体的直感として高められる思考形態であるともいえる。そしてこれらの、思考サイクルを社会的な高度な意識状態で維持できる好奇心と使命感が必要となる。
 分解する……分析力……微分、解析、分析 
 統合する……統合力……積分、類似、集合
 持続力………好奇心、野心、夢、責任感
 無欲な重高度な意識のレベル……公共性、正義感、真理への探究心

■分析力

 物事を分析するには、AとBとを比較する能力が最低条件として必要になります。そのため、数学的な同一か否かの判定能力や証明能力が求められます。一般的な概念としての同一の判定では、図形的な合同といった概念よりも、一般的な形としての同一つまり、図形的な相似の認識能力がより必要になります。つまり、大きさの問題ではなく、その性質や特性が問題となります。
さらに進んで、一般的な事象としては、形や言葉、形態は異なっていても、同じ意味、利用目的としての同一(合同)も数多く存在しています。
これらの概念や意味を、基本定義として理解しないと、その考え方を発展させ、創造にまで結びつけることは困難になります。
このことから、数学的な分析能力には、言葉の定義と理解力(国語力)とが親密で重要な関係にあることがわかります。

 囲碁教育では、さらに図形の意味を言葉に変換させることが必要になります。図形の意味を理解し、その役割を言葉の概念として理解しなければ、実践においては利用できません。このような、言葉と意味と図形の関係を明確に学習できる特色を囲碁の学習にみることができます。

■ 同じ意味であるが微妙な違いがわかる

 言葉の意味が同じであっても、感情や上下関係によって言葉は変化します。それと同様に、囲碁の場合において局所的な位置関係が同じであっても、全局的な視野からみると、微細にその意味が異なり、そのための無数の定石や着手が生まれます。
 囲碁では、上級者になればなるほど、この微細な感覚に対する感性と理解力が問題になります。これらの能力は、最高級の商品を作る上でも、必要不可欠な能力といえます。

     真理の追究と勝利への意欲が、集中力として高め、
     ひらめきとして妙手を生み出す。
     またこの妙手(手筋)への着手研究が、新たな価値感を生み出す。