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第1節 着手効率の重要性

囲碁理論における最大のテーマは、

  1. 効率と囲碁ルールとの関係
  2. 効率と着手ミスの関係
  3. 効率と着手価値との関係

の3つを解明することにあります。これらの解明過程での中心となる研究テーマが、効率とそれと深く関係する、着手ミスと着手価値になります。これらについては、後の章でも記述していますが、効率や価値は、一般常識での効率や価値とは大きく異なるため、その誤解を取り除くために説明するものです。

1 効率という概念へのアプローチ

(1) 囲碁での効率の原点

囲碁での効率を考える場合には、あくまで囲碁ルールによって規制されたゲームとして学ぶ必要があります。それは、囲碁という限定された考え方であり、ゲーム理論として効率であって、世間一般で通論じられている効率概念を、囲碁に持ち込んではいけないことを意味しています。例として、世間一般での効率では、

  1. 1時間でいくつ物が作れるのか。
  2. 100万円を投資すればどのくらい利益があるのか。
  3. 健康を維持するにはどれだけ運動すればいいのか。

などがありますが、これらの効率は、囲碁のような「対戦型ゲームでの効率」とは、その内容が大きく異なっています。またさらに囲碁に近い柔道、剣道、などの「2人の対戦型スポーツ」においても、一部に類似性はありますが、基本となる概念は異なっています。このため囲碁特有の効率を、他の効率の価値観で理解することは、かえって上達を遅らせる原因になってしまいます。

(2)効率と着手ミスの関係

 着手ミスは、一般効率からみると、正反対の負の効率であるといえます。勝敗の原因を考えると、すべて着手ミスによって生まれていっても過言ではなく、効率の研究には、ミス分類し研究することが必要になります。

対局ソフトの対戦においても着手ミスの勝敗への影響は明らかになっています。いい手を10回打っても、1回の大きなミスによって負けるの勝敗の常識になっています。つまり、勝負として争いは。効率の「いい手を打つのではなく、悪手を打たない」、「打った悪手を修正する能力を競う」「打った悪手を咎める」ゲームであるといえます。

純粋な効率論として追求でききることは、個々の場面で最善手を見つけようとする追求の考え方はではなく、「天元という1点の場所に打たれる石の働きを、最高にする構想」のみに集約されているといえます。

着手ミスの原因の多くは、効率や価値の知識不足が必要ですが、
知識量だけでなく、知識の質つまり「効率や価値の認識間違い」や「基本知識と例外知識の区分ミス」を知る必要があります。つまり、例外知識を、基本の効率知識と混同して理解すると着手ミスが生まれてます。このため、一般知識の習得においては、その区分を正しく理解した活用知識が重要になります。このため、理論研究においても「ミスをする理由とは何か」という探求が、効率の概念の理解において重要な要因になっています。

(3) 効率と9つの価値

効率の原点となるものが価値であり、価値の認識によって効率が理解できるようになります。囲碁には、重要な価値として9つの価値があります。これらの価値には、手順の進行で一手ごとに大きく変化する「可能性」「危険性」「確定性」という基本となる価値があります。基本価値は、手順進行によって、徐々に小さくなり、最終的には「必然性」、「連続性」という2つの価値へと変化すことになります。この価値を生み出すためには、囲碁の最大特徴である、「どこにでも打てる「自由性」を攻撃目標として、相手の自由性を制約し、自分の自由性は保持する戦術が用いられています。これによって、形勢の優位性を保とうとし、形勢が不利いなると勝負手を打つことになります。この勝負手の予想と判断においては、「安定性」「関連性」という2つの価値が重要になります。また「安定性」や、「関連性」は、見合い条件、絡み攻めの条件によって生まれているため、この知識が必要になります。

9つの特性と価値

  1. 自由性…着手、構想が自由に選択できること
  2. 定形性…形や場所によって効率が変化すること
  3. 危険性…石が取られる危険があること
  4. 可能性…地として囲える空間があること
  5. 確定性…生きた石は、絶対に取られないこと
  6. 安定性…見合い条件で、戦いが一時停止すること
  7. 関連性…複数の戦いが、同時に進行すること
  8. 必然性…この一手しか、選択ができない状態のこと
  9. 連続性…2手以上連続して打てると状態にあること

2 効率の特性と分類

効率には、6つの種類(パターン)があります。

  1. あなたが、目標とすべき「積極的な効率」
  2. あなたが、目標とはするが用心すべき効率
  3. 相手に、打たせてはならない効率
  4. あなたが打ってはならない悪手
  5. 相手のミスを追及することで得られる効率
  6. 自分のミスを減少らせる効率

以上がその6つになりますが、これが「着手効率」の章で説明する
「制約の効率」「必然の効率」「一般の効率」と関係しています。
つまり

  • (1)は「制約の効率」であり、いつでも意識して打っていい
    「あなたが目標とすべき」積極的な効率になります。
  • (2)は「必然の効率」であり、失敗すると「悪手」になる危険性があるため、「目標とすべき」ですが十分な注意が必要な積極的な効率になります。
  • (3)は「一般的な効率」であり、これは、相手に打たせないように邪魔をすべき効率である。
  • (4)は、あなた自ら、相手からの制約を生む手であり、あなたからは絶対にイ打ってはならない消極的な効率です。
  • (5)は、勝つめに必須の能力になります
  • (6)は、「制約の効率」と「攻める意識」によって、その損失を減少さられることで得られる効率です。

3 理論を勉強するための最低知識

囲碁理論の理解には、6級程度の知識が必要です、それは説明内容を、イメージとして理解していただく必要があるからです。このため知識として「有段者になるための囲碁テクニック」や「格言の知識」など高度な知識は特に必要というものではありませんが、知っていれば理解の助けにはなります。

(1)囲碁における基礎知識とは

アマの棋力差は、知識量つまり情報量の差であるといえます。高段者になると、この差は小さくなり、知識の理解度と活用能力の差になります。また、年齢による棋力低下はほとんど無く、それは80歳を過ぎた場合など例外的でありかつプロ同士の対戦での、緻密な読みを必要とする極めて限られた場面でのみ現れ、アマの場合には、ほとんど影響はないといえます。

(2) 効率を考えるための最低知識

着手効率の基礎知識として

  1. 目的達成(確定)には、5手以上の手が必要になる。
  2. 確定は、生きることによって生まれる。
  3. 着手は交互に打たれる。
  4. 連続して打てると効率が生まれる。
  5. 目的の達成効率より、阻止効率が大きい。
  6. 複数の戦いが、同時に進行している。
  7. 一手の損得は、得られる価値より、損失が大きい。
  8. 相手のミスを咎めないと効率にならない。
  9. 相手のミスを咎めないと、悪手がいい手になる。
  10. 打った石は動かせないため、手抜きと捨石が生まれる。

などがありますが、これらの詳細については、この後の章でも繰り返し述べますので、ここでは省略します。

(3) 基本となる効率概念

確定地を囲う構想を考えてみます。地を完成させるには、10手が必要であるとします。現在、9手まで打たれ、後1手で地が完成する状況であるとします。すると、相手は、正にこのタイミングになった時、地を囲わせないよう邪魔する手を打ってきます。そのまま放置するとそれまでの9つの手が全て無駄になるため、「受けざるをえない」という状況を狙って、相手に受けさせます。地を囲う側は、しかたなく、必ず減らされないよう受ける手を打ちます。この一連の戦いの流れを正しいと思っている人は数多くいますが、考え方は根本から、間違っています。その第一理由は、完成までに10手もかかる、「地を囲う行為」効率を高める考え方であると思っていることにあります。なぜなら、10手も必要な行為をによって完成できる保障ほとんどなく、それを得ようした構想こそ、相手に自分の構想阻止する価値を与えたことになるのです。

(4) 制限という効率

一手の価値効率を、「地の制約」「生きの制約」の価値として捉えることで、上記のような効率概念は、根本から一変します。「地の制限」をするという「効率」は、常に価値として存在し、特に大場や急場というような場面判断をしなくても、何時でも打てる無駄のない手になります。また「生きの制限」の価値は、完全に生きていない石は、ヨセになるまで存在しています。つまり、これらの制限した手、打った石が無条件に取られない限り、終局までその価値が消滅することないのです。