2001/11/07更新

関連項目 理論の必要性

§1 誰でもわかる碁の理論

 

1. 碁とはどんなゲーム

 コンピューターの対局ソフトでは、「囲碁は一体どんなゲームであるか」の認識と理解の違いで、その思考ルーチンの優劣に大きな差が生まれます。

囲碁を最初に考案した人は、囲碁というゲームをどんなゲームとして楽しもうと考えていたのでしょう。現在でも囲碁のルールとして日本と中国ではその内容に違いがあります。

日本では、地の大きさを競う・・・・・・・・・ 地取りゲーム
中国では、盤上に置ける石数を競う・・・ 生き残りゲーム

として定義されています。このようなルールの違いがあるにもかかわらず、同じ一つのゲームとして楽しめるところに、実は囲碁のゲームとしての本質が隠されています。

 

2. 囲碁は「囲って石を取る」 ゲームでない

この両国の異なったルールにもかかわらず、
 相手の石を囲えば、石が取れ盤上から取り除くことができる。
といったルールはどちらにも共通したルールになっています。しかし、この両国のルールとも
 取った相手の石数を競う・・・・石取りゲームではない
のはどうしてでしょうか。実はこれが第一の秘密を解く鍵になっています。
死活や手筋といった石を取る問題がたくさんあるにもかかわらず、なぜ取った石数を競うゲームにならないのかを次に説明したいと思います。

 

3. 石は囲って取れない

相手の石を取るには、相手の周囲をすべて囲わなければならないため、
 取るための石数が取られる石数より数多く必要
となるからです。つまり
 囲われないようすれは、石は絶対に取られない
別な反対の表現をすれば
 逃げようとする相手の石を、囲うことができない
ゲームであるということに気がつきます。

このように石を囲って取ることができないため、石取りゲームとして定義が出来ないのがその答えになります。

しかしそれでは何故、「囲碁が石取りゲーム」でないのに、囲えば石が取れるというルールが必要だったのでしょうか。次にそのことについて説明します。

 

4. 「囲えば取れる」というルールが必要な理由

中国ルールで説明いたします。中国では盤上に置ける石数を競うゲームとして競技するため、数多く置いた方が勝ちになります。
囲碁のルールでは、黒白交互に打つことが義務つけられているため、19路盤上に石を置く場合、碁盤の大きさが19*19で361ヶ所に石を置くことができます。黒白交互に置いていくと、黒石が181個、白石が180個、置かれる計算になります。つまり、先に黒石を置き始めた黒側が、必ず1子白より数多く碁盤に石が置けるため、いつも黒の勝ちになってしまいます。これではゲームになりません。そのためどうしても「囲えば石が取れる」というルールが必要となったのです。

 

5. 「囲えば石が取れる」 から急場が生まれる

「囲えば取れるというルール」は、いいかえれば「囲われないように逃げないと取られるぞ」ということになります。どこに石を置ても自由であるというルールに、囲われると取られる、逃げないと取られるという条件をつけることで、今どこに打つべきかという急場の概念と着手が生まれることになります。

 

6. 「逃がす」ことで地が増える

また囲碁用語には、「石を取る」、「石を殺す」といった社会的に好ましくない言葉が登場しますが、囲碁での基本的な考え方は、逃げないと取られるという状況を作りだすことによって相手に逃げるチャンスを与え、そのことで相手の打つ手を制限することによって、邪魔をされずに自分の地を囲うことが可能になるというゲームなのです。

 

7. 囲碁格言での重要な言葉  第一のキーワード

このことを最もよく表現した囲碁の格言として、「取ろう取ろうは取られのもと」といった言葉があり、これこそ「石は取れません。石を取ろうと思ってはいけません」ということを表現しています。つまり、相手の石を逃がす、生かすように誘導することが基本であり、その中にこそ必然でかつ自然な無理のない手にによって勝つことができるゲームが囲碁であると教えています。