碁の方程式
未来からの贈り物

何を作ればいいのか

2013/05/02

「俺、対局の囲碁ソフトを作ることになったのだが、一体何から手をつければいいのかさえわからない。何かいいアドバイスをくれないか」とマサが瀬越へ電話ごしに頼んできた。

瀬越は、マサの学生時代の親友である。といっても、親友と思っているのはマサの一方通行かもしれない。なぜなら、マサが困った時に即座に電話する友達である。

「お前が、囲碁のソフトを作る?、それは無理だろう。」と即座に直球で返す。

 「囲碁ってゲームはものすごく難しくて奥が深い、プロになることは、東大に入るより難しいと聞いたことがあるぞ」と。

でも、この程度の返答はマサの予想内である。

 「そのなことはどうでもいいよ。俺が今からプロになるのではないんだ。ただ売れるソフトができればいいだけなのだから」
 「対局ソフトというものは、もう売られているのかい」
 「売られているらしいよ」
 「売られているらしいといということは、お前まだ見たことがないな」
しまった、やはり瀬越は手怖い。

「どちらにせよ、まずはコンピューターで打てる碁盤自体ができないと話にならないね」
 「あっそうか、それはそうだ、なるほど」 

マサはすぐに相手の発想に感心する。

 「これぐらいのことは誰でも気づくだろ」
 「それは人によるよ。そういうのは、よほど切羽詰まらないと、知恵は生まれない」

マサの言い訳は、お手のもである。

 「よく言うよ。お前はいつも困った時には、自分で考えるより先に俺に意見を聞きに来る。」

さすがに瀬越は自分を見透かしている。マサは、その意見をすぐに採用した。確かに碁盤と碁石がないと対局ソフトは作れないからである。