座談会(5) 囲碁ってどんなゲーム

参加メンバー

主な内容

始めの挨拶、石数が増えると…終局になる、着手効率、連続性、連続性について


始めの挨拶

司会 時間になりましたので、5回目の理論座談会を始めさせていただきます。
高橋先生がお休みです。

司会 越田の先生にお聞きしたいのですが、囲碁を教える人にとっての必要知識はなんですか。

越田 囲碁の教え方は、皆さん大変苦労されていると思います。
また、自分でいろいろ工夫されていると思いますが、目的と手段を混同して教えると、
上達において問題が生まれます。

司会 ほう〜:そうなんですか。で..その目的と手段とは、どう違うのですか。

越田 碁は、「地を囲う効率を争うゲーム」というのが目的が、「地を囲うゲーム」ではありません。
地を囲うという動作は、効率を競う一つの手段にしかすぎません。
その他にも、効率を高める手段には、
 1. 自分の地を増やす。
 2. 相手の地を減らす。
 3. 自分の石を攻められないように守る
 4. 相手の石を、いきにくくさせる
など、数多くの方法があります。

越田 全局を通じた着手目的は、「地を囲う効率を高める」工夫にあって、
その目的が手順の進行と場面の状況で変化します。

良子(6級) 私なんか、石数が増えるのはわかるけど、それ以外は意識したことないわ。

越田 良子さん、その盤上に石数が増えることが、もっとも重要な変化要因になっています。

良子 え〜!そうなんですか。

越田 盤上に石数が増えると、どうなるかを考えてみましょう。


石数が増えると…終局になる

越田 石数が増えると、黒白ともに「一手で囲える地の大きさ」が減るのです。

岡村先生 地が囲える可能性が減るのが、越田理論の基本ですね。

山田指導員 それは、越田理論というより、あたり前のことでしょう。

良子 でも、越田先生のように、そのことを強調する人はいませんね。

越田 そうですね。地の可能性が減ることから、「一手の価値」が徐々に小さくなるのです。

岡村先生 どうしてですか。

越田 一手の価値は、手順進行によって変化しますが、
その基準が「一手で囲える地の大きさの最大値」と関係しているからです。

越田 その最大値が、その場面での上限価値となり、
その値との相対的な比較によって最善手を選択しよとしています。

岡村先生 つまり、各場面での「地として囲える価値」の最大値が、基準になっているのですね。

越田 そうです。
そのため、地の可能性がゼロになると、終局になるゲームになっているのです。


着手効率

越田 次に着手効率について話します。
着手効率では、「地の可能性」と「地の確定率」という2つの価値が関係しています。

司会 「地の確定率」とは、新しい言葉ですね、どういう意味ですか。

越田 地の確定率とは、地の可能性の大きさがどれだけの確率で、自分の確定地になるかの大きさです。
勢力地の大きさが20目であっても、半分の10目しか、確定地にできない場合には、
地の確定率は50%になります。

岡村先生 ということは、「地の可能性がいくら大きくても、地の確定率が小さいと地にならない」
ということになりますね。

越田 その通りです。
ですから、その局面で、地の可能性を重視すべきか、
地への確定率を重視すべきかの状況判断必要になります。

岡村先生 その確定率の値は、どのようにして求めるのですか。

越田 理論としての正確な計算方法は、まだ未解決です。私自身もよくわかっていいません。
まあ実戦で正確に計算できるなら、私でもすぐにプロになれるでしょうね。

良子 それなら、その理論いくら知っていても、実用性がないってこと。

越田 実用できるかどうかは、本人の努力と才能ですが、知識としては重要ですよ。


連続性

越田 正しい計算方法は、わかりませんが、どのような要因によって
「地の確定率」が影響を受けているのかについてわかっています。

岡村先生 それは、すごいですね。その要因とはなんですか。

越田 それは、「必然性」と「連続性」の大きさになります。

司会 「必然性」とは。前回からの先手のことですね。

越田 そうです。ただし先手だけでなく、
以前お話しした制約条件による石の流れも、それにあたります。

司会 連続性とはなんですか。

越田 連続性とは、必然の手が連続することで、目的の達成が容易になる大きさのことです。

越田 地を囲う場合には、地を囲うための配置、
また相手の石を取るには、石を取るための石の配置が必要になります。
配置という言葉からもわかるように、関連性がないと
「地を囲う」ことも、「石を取る」こともできません。

良子 それは当たり前でしょう。いまさら言われなくてわかってますわ。

越田 効率のいい地を囲おうとすると、当然ながら相手から邪魔が入り、それを阻止する手が打たれます。
例えば、三三に打ち込んで、相手の地を減らす手のことです。

良子 それもわかりますわ。

越田 連続性は、このような相手が邪魔しようする手を、打たせないために必要なんです。
つまり、地を囲う場合には、一気に囲いきることが重要です。
これが、連続性という効果です。

良子 連続性があると、邪魔させないことができるのね。

越田 そうです。目的が達成できるかどうかの確率は、この連続性の大きさによって大きく影響されています。


連続性について

越田 ここまで、話が進展すると、今度は連続性がどのように生まれるのか気になりませんか。

純子(12級) 気になりせん。もう理解の限界ですもの。

三男(初段) 純子さんには、難しいでしょうね。

岡村先生 せっかくなので、もう少し我慢して聞いてあげましょう。笑う…

越田 連続性は、先手としての利筋が関連性をもって集まって状態をいいます。
このため、相手が100%受ける必然の有無が問題になります。
また、さらに次の狙いの有無が問題になりますね。

岡村先生 要約すると、「利筋」と「次の狙い」の数が問題になるのですね。

越田 そうです。実戦では、弱い石が生まれると。
連続性が、急激に増大することになります。

良子(6級) どうしてですか。

越田 弱い石が、手抜きできる状態になるまでには、30手以上かかることが普通だからです。

良子 それで、弱い石を作ると、負けちゃうのですね。